高円宮杯HP  全日本ユース改革大会を終えて(前編) (後編)
1次ラウンド ガンバ大阪 市立船橋 鹿児島城西 準々決勝 鵬翔高校 準決勝 サンフレッチェ広島
決勝 市立船橋
2次ラウンド

高円宮杯第14回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会詳細

1次ラウンド応援について 10月11日応援バスのお知らせ

了承を得て サッカーオンラインマガジン2002world.com http://www.2002world.com/news/200310/031015_news143.html より転載させていただきました。
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 webnews 03/10/15 (水) <前へ次へindexへ>
 第14回高円宮杯は雨中の決戦となった。
市立船橋、雨中の決戦を制し、高円宮杯初制覇。
第14回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会 決勝 市立船橋高校vs.静岡学園高校

2003年10月13日(月)13:00キックオフ さいたまスタジアム2002 観衆:6,403人 天候:雨
試合結果//市立船橋高校1−0静岡学園高校(前1−0、後0−0)
得点経過/[市立船橋]カレン・ロバート(31分)

取材・文/西森彰

 一発勝負からリーグ戦主体のトーナメントへと大会方式の改正を行なった第14回全日本ユースサッカー選手権大会。決勝戦は冬の選手権の覇者・市立船橋高校と、クラブユースナンバー1チーム・サンフレッチェ広島ユースを破った静岡学園の顔合わせとなった。柏の葉公園総合競技場で行なわれたグループリーグでも対戦していた両チーム。その時は市立船橋がホームの利を生かし、猪股英明、増嶋竜也のゴールで2−0の勝利を収めた。共に決勝戦は初めて。このタイトルに賭ける意気込みは高いはずだ。

 そんな彼らの戦いを目にしようと、「雨」の天気予報にもへこたれず、さいたまスタジアム2002に集まった観衆は6,403人。チケット発売所が小口だったこともあり、キックオフ30分前に降りだした雨の中、入場するまでに15分以上もかかった方もいたらしい。しかも、さいたまスタジアムは、芝育成のための通気性を保つように設計されており、少し強い風混じりの雨が降ると、屋根はほとんど飾りになってしまう。1階席の前半分に座った人たちはびしょ濡れ。

 しかし、サッカーはもともとそんなスポーツ。初優勝に燃える両校の応援団、そしてほとんど役に立っていない透明傘やカッパで雨を防ぎながら試合を見守るファンは、そんな悪条件の中でもほとんど意に介さず、選手とボールの動きを楽しそうに追った。



 キックオフから、まずペースを掴んだのは静岡学園のほうだった。3−5−2のシステムを敷く静岡学園は、相手陣内で細かいショートパスをつなぎ、ラインディフェンスを敷く市立船橋の背後にスルーパスを狙う。狭いスペースの中で、市立船橋ディフェンダーの間をダイレクトタッチのパスが通るたびに、スタンドの観客からはため息がもれる。

 静岡学園はハーフコートゲームのように、引き気味の市立船橋サイドでゲームを進め、そのゴールに迫る。16分には板倉史門がポストになって最終ラインの裏にチップキックでラストパスを送ると、2列目から加藤僚が走りこんでGK佐藤優の目の前で受ける。これは、ゴール右に外したが、その3分後にも同じように左サイドから1対1のチャンスを作る。

 今大会屈指のディフェンダーの呼び声が高い増嶋がいるエリアから、連続して決定機を与えたことで、市立船橋のほうはますますディフェンスに重心をかける。すると静岡学園は左から右に攻撃の重心を移す。右で細かくパスをつないで大きく左にサイドチェンジ。ワンテンポ早く抜け出した横山が、胸トラップで下に落としたボールを左足でそのままボレー。右ポストを直撃した27分のこのプレーまでは完全に静岡学園のゲームだった。



 市立船橋は流れが相手にいっていることを自覚しながら、ひとつひとつのリスタートに時間をかける。特にゴールキーパーの佐藤は、ゴールキックの都度、味方のプレーヤーに声をかけながらアウトオブプレーの時間を増やし、静岡学園の激流を緩めた。正月の選手権決勝でも国見高校のラッシュを止めた、市立船橋が備えるゲーム回しの妙だ。

 そして勝負の天秤を徐々に均衡化させた市立船橋にゴールが生まれる。猪股がゆっくりと左サイドを上がりながら、中村友亮を後ろに引っ張る。広くできたスペースを見て、石井秀典がスルスルと前方に、この試合初めて攻撃に参加した。左サイドでフリーの石井にボールが渡る。雨のせいか、石井のクロスはやや精度を欠いたが、ディフェンダーのクリアも小さかった。

 石井の攻撃参加が、守る静岡学園に僅かなマークのズレをもたらしていた。最終ラインの手前でフリーになっていたカレン・ロバートがリバウンドボールに足を振り抜くと、世界標準の強烈なボレーシュートが静岡学園のゴールに突き刺さった。市立船橋が30分間待ち続けたチャンスを見事に生かした。



 1点のビハインドを背負った静岡学園をさらに不運が襲う。さいたまスタジアムの上空を覆う雲がその厚さを増し、雨脚も徐々に強まってきたのだ。個々の選手が高いテクニックを有している両チームだが、どちらかといえばショートパスをベースにした南米スタイルのサッカーが身上の静岡学園に不利なピッチ状態が作られていく。

 ピッチの排水機能を上回る降水量はセンターサークル付近に大きな湿地帯を作り出した。この「12人目の敵選手」は自分の上を横切るグラウンダーのパスはことごとくカットし、ドリブルの威力も大きく減じさせる。もちろんそれは静岡学園だけでなく、市立船橋にも等しく立ちはだかった。しかし、リードしている市立船橋にしてみれば同数のディフェンダーが増えるのは歓迎材料。イライラが募る静岡学園の選手たちは次々にイエローカードを受けていく。

 市立船橋は自軍のゴール前に鉄壁の守備を構築する。前半に揺さぶられた2列目からの走りこみには、きっちりとミッドフィルダーが付いて対処し、フリーでの抜け出しを許さない。静岡学園の焦りを誘いながら、勝者のストラテジーを完璧に実行した市立船橋は、終盤の猛攻も凌ぎきって虎の子の1点を守りきって初優勝を飾った。



 市立船橋のチーム関係者は試合終了後、応援してくれたファンに
 感謝の礼。
 皮肉なことにタイムアップとほとんど時を同じくして、上空の黒雲は去っていった。表彰式のセレモニーが始まる頃には、雲間から太陽が姿を現した。静岡学園には天が味方しなかった。キックオフの笛が2時間前に吹かれていても試合結果がひっくり返ったかどうかは分からない。しかし、少なくとも「力負けじゃない」という悔しさを抱えたまま、静岡に帰ることはなかっただろう。

 優勝という結果こそ付いてこなかったが、来場者に驚きの声をもたらした高質な攻撃サッカー自体まで否定されたわけではない。幸いというか、借りを返す舞台はまだ残っている。冬の全国高等学校サッカー選手権。サッカー王国・静岡県の代表を勝ち取るには全国を勝ち抜くのと同程度の困難を伴うが、そこをクリアせずして市立船橋とのリベンジマッチは望めない。サンフレッチェ広島ユースに勝利した舞台・国立霞ヶ丘陸上競技場も「静学」が帰ってくるのを待っている。



「13日の月曜日」というのは対戦相手にとっては厄日であり、市立船橋にとってスーパーゴールを呼び込む祝日なのかも知れない。9ヶ月前の1月13日には小川佳純の一撃で国見の選手権3連覇の夢を打ち砕き、この日はカレン・ロバートの弾丸シュートが初めての栄冠を呼び込んだ。もちろん、全国一にたどり着いたのは「この一本」を生むまでの道程があってこそだ。

 クラブユースや高校の名門ばかり20校が名を連ねた関東ブロックでは決勝大会への切符が僅かに2つだけ。勝ち点2の間に4チームがひしめくLeague Bの激戦を2位通過。鹿島高校をXゴールで振り切り、準決勝でも桐光学園高校との1点差ゲームを制して全国大会参加を決めた。さらに帝京高校との間で行なわれた決勝戦も、PK戦を12対11という壮絶なスコアで勝利。この日、幸運に恵まれるだけのプロセスは通過している。

 高円宮杯は、布啓一郎前監督(現U-15日本代表監督)の退任後、新生・市立船橋高校にとって初めてのタイトル。石渡靖之監督はじめ、新体制を率いるスタッフも肩の荷を下ろしたことだろう。この後はいよいよ、ディフェンディング・チャンピオンとして挑む冬の選手権が待っている。


(市立船橋高校) (静岡学園高校)
GK: 佐藤優也 GK: 飯塚渉
DF: 寺田雅俊、増嶋竜也、渡邉広大、石井秀典 DF: 庄子基史、小林祐三、平島大介
MF: 中村健太、米田拓巨、根本茂洋、猪俣英明(83分/薬袋克己) MF: 山梨純平(85分/青木亮太)、加藤僚、中村友亮、松下幸平、狩野健太
FW: 榎本健太郎(79分/鈴木修人)、カレン・ロバート FW: 板倉史門(45分/木戸吾郎)、横山拓也
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「堅守」静岡学園。優勝候補、広島を破る。
高円宮杯第14回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会 準決勝第1試合 サンフレッチェ広島ユースvs.静岡学園

2003年10月11日(金)12:00キックオフ 国立霞ヶ丘競技場
試合結果/サンフレッチェ広島ユース0−1静岡学園(前0−0、後0−1)
得点経過/[静岡学園]松下(80分)


文/中倉一志

 4月に開幕したプリンスリーグから半年。クラブチームと高校が同じ土俵で戦う大会に様変わりした高円宮杯も、いよいよ準決勝を迎えた。長く厳しいリーグ戦と、選ばれた8チームで戦うトーナメント戦を勝ち抜いて来たのは、サンフレッチェ広島ユース、静岡学園、市立船橋、東福岡の4チーム。どのチームも高校年代の強豪ばかり。どこが勝ってもおかしくない。しかし、真の高校チャンピオンの座は互いに譲れない。

 さて、国立競技場で行われる準決勝第1試合ではサンフレッチェ広島ユース(以下、広島ユース)と静岡学園が顔を合わせた。広島ユースは第一次ラウンドでは帝京、東福岡、星陵と同一グループ。しかし、14得点1失点という圧倒的な攻撃力を発揮して1位でリーグを勝ち抜くと準々決勝ではインターハイ優勝校の国見を1−0で下してここまで辿り着いた。その圧倒的名攻撃力は大会随一。優勝候補筆頭の呼び声が高い。

 対する静岡学園はブラジルサッカーを標榜する高校サッカー界の名門。決められた枠に収まらない自由奔放なサッカーは高校サッカー界では異色の存在。個人技を重視したサッカーが持ち味だ。第一次ラウンドの成績は1勝1分1敗。準々決勝では鵬翔高校を2−0で下して準決勝まで駒を進めてきた。5得点4失点という記録は攻撃面では物足りないが、それを堅守で補ってきた。圧倒的な攻撃力を誇る広島をどう押さえるかが決勝進出への鍵になる。



 試合は予想通り、広島ユースが攻め込む形で始まった。広島ユースの布陣は3−4−3。最終ラインが高い位置を保ってコンパクトなゾーンを敷き、高い位置から相手ボールにプレッシャーをかける。攻撃では3人のFWがポジションチェンジを繰り返してスペースへ飛び出し、それをトップ下の桑田とボランチの高萩がフォローする。基本通りに繰り返されるパス&ゴーと、第2、第3の動き。複数のパスコースを確保してスピーディにボールを回す。

 しかし、静岡学園はそんな広島の攻撃にも動ずるそぶりを見せない。開始から20分間ほどは自陣内での戦いを余儀なくされたが、押し込まれながらも決して決定的なチャンスを与えない。最終ラインの3人は高い位置を保ち、飛び込んでくる選手を決してフリーにさせない守備は、むしろ余裕すら感じさせるほどだ。やがて広島のタイミングに慣れると、機を見て前に出るシーンも増え始めた。しかし、基本は守備重視。決して不必要に前へは上がらない。

 20分を過ぎてからは試合はこう着状態に。しかし、両チームとも攻めあぐねたわけでも、引いて守ったわけでもない。高いレベルでの試合はひとつのミスが命取り。安全策を取りながら、しかしわずかな隙を見逃すまいと神経を張り巡らす。誘い込むように最終ラインでパスを回す静岡学園。不用意に飛び込まずにパスコースを切って静岡学園の攻撃の糸口を消す広島ユース。丁々発止の駆け引きが行われている。放ったシュートは静岡学園の4本と広島ユースの6本。しかし、数字以上に緊張感のある試合だ。



 0−0で迎えた後半、広島ユースが勝負に出た。46分、西山のドリブルシュートがクロスバーをかすめる。そして、高萩も積極的に攻撃参加、前がかりになって静岡学園ゴールを目指す。しかし、静岡学園はそんな広浜の動きにあわせることはない。相変わらず安定した最終ラインを軸にしっかりと守り抜いていく。勝負どころはまだ先といわんばかりに落ち着き払っている。どちらかといえば、広島ユースに攻めさせているといった雰囲気さえ漂わせている。

 攻めているように見えて、どうしてもシュートを打たせてもらえない広島ユース。どうやら試合は静岡学園の狙い通りの展開になっているようだ。やがて静岡学園の守備をこじ開けようと前へ出てくる広島の隙を突いて静岡学園が前に出るシーンが増え始めた。怒涛の攻めとか、鋭いカウンターとかいう攻撃ではない。しかし、必ずやって来る決定機を決して逃さないといった集中力の高さを感じさせる攻撃は不気味な感じすら漂わせている。

 そして80分、静岡学園の研ぎ澄まされた集中力が爆発するときがやってくる。右からのCKから低く速いボールが放たれると、これしかないというタイミングで松下が頭から飛び込んだ。ゆれるゴールネット。静岡学園の狙い通りの一発だった。今大会、初めて先制点を奪われた広島は前線に人数をかけてパワープレーを敢行。強引にゴールを奪いに行ったが、静岡学園の堅守は最後まで乱れない。そして3分間のロスタイムを経過して試合終了のホイッスル。静岡学園は広島の攻撃を無失点に抑えて決勝進出を果たした。



 静岡学園の狙い通りの勝利だった。勝因は堅い守りと巧みな攻め、その戦術にあった。静岡学園は、いわゆる引いて守って一発のチームではない。最終ラインは3人のまま。全員で囲い込むようにしてボールを追い込み、最後はセンターに位置する小林が計算通りにボールを奪うと、そこから計算しつくしたように前にボールを運んだ。その洗練された攻守は見事の一言だった。堅い守りをベースに一瞬の隙を見逃さない研ぎ澄まされた嗅覚。まるで大人のチームを連想させる戦いぶりは試合巧者そのものだった。
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全日本ユース 改革大会を終えて(前編)

■新たなスタートを切った全日本ユースに浮かび上がる問題点


 第14回全日本ユースが終わった。高体連、クラブの垣根を越えた中での市立船橋の優勝は選手の質、戦術、そして内容とすべてがそろった素晴らしいものであり、新たなスタートを切ったこの大会にとって、ふさわしいものになったと言えるだろう。

 いきなり「新たなスタートを切った」と書いたが、この大会では過去の反省から育成年代の日本一を決めるにふさわしい大会にしようと大会改革を進め、今年度は幾つかの点で抜本的な転換が行われた上でのリスタートだった。そこで何が変わったかをもう一度整理しておこう。

 まず昨年度までは全日本ユース出場チームの決定方法は、高体連は基本的にインターハイの都道府県予選の後に行われる9地域大会の優勝校。しかも地域大会はトーナメント戦に限られるとともに、初夏のチームを作りの初期段階に行われることから、「正直言って、去年まで全日本ユースは地域大会に勝ったチームのおまけみたいなもの」(市立船橋・石渡監督)だった側面は否定できない。

 一方のクラブは夏休みに行われるU−18クラブユース選手権の上位(基本的には5チーム)が出場権を得ていた。クラブにとっては、「真剣勝負の舞台で高体連のチームと当たれる唯一の場」(広島ユース・森山監督)であり、対抗意識はかなり強かった。ただ、過去の歴史を振り返ると、13回の大会で優勝は高体連が12回でクラブはわずかに1回。圧倒的に高体連有利だった。

 しかし、今年の大会から出場チーム選定の段階で大きく変わった。特に顕著な点は9地域の代表決定に高体連とクラブを完全にミックスしたリーグ戦を導入したことである。早いところで九州のように3月から大会は始まり、8月末まで時間をかけて真剣勝負を行った。ただし、9地域それぞれにリーグ戦の方式がまちまちで、2回戦総当り制にしているところがある半面、わずか5節で終わってしまう地域もあった。このあたりは来年度への非常に大きな課題となった。

 同時に「中国地方にはあまり強いチームがない」と前出の森山監督が語ったように、プリンスリーグの段階で、どれほど試合数を増やしても地域格差によって根本的なレベル差が埋まらないケースもある。関東、東海、関西、九州以外のエリアに属す強豪チームは独り勝ちが当然になってしまい、強ければ強いほどこうした悩みは尽きない。プリンスリーグは地域の垣根を越えた形にしないと、全体の底上げになっても強豪チームの強化にはつながらないという矛盾を生むことになりかねない。


■グループ分け、最終節の他時刻開催、日程、移動……


 次に本大会を振り返ると、幾つかの問題点が浮かび上がる。まずグループ分け抽選の段階で強豪が一同に集ったグループと、そうでないグループがはっきりと分かれてしまった。特にグループCは関東1位の市立船橋、東海2位の静岡学園、関西1位のG大阪ユース、そして九州1位の鹿児島城西。先進地域の上位ばかりで、あまりにハイレベルな争いに『死のグループ』といわれたが、出場チームにとってはなんとも迷惑な組分けである。結果論ではあるが、グループCに属した市立船橋と静岡学園が決勝に進んでおり、他のグループよりレベルは数段高かった。逆にG大阪ユースがこの段階で消えてしまうのはあまりにもったいなかった。来年からは何らかの方法でこれら先進4地域の上位チームをシードするなどの必要があるだろう。

 さらに問題だったのは予選リーグ第3戦が同時刻&他会場開催でなかった点だ。つまり同じ組の第1試合の結果を見て、第2試合のチームは戦うことができたのだ。勝ち点や得失点を計算しながら第2試合のチームはプレーすることができる。各国のプロリーグを見ても分かるように最終節は同時刻開催であり、それが常識である。「絶対に問題。ぜひマスコミが書いて」とは静岡学園の井田監督のコメントだ。今回のような大会方式は普通サッカーの世界ではあってはならないことだ。来年は絶対に同時刻開催にしなくてはならない。

 加えて日程と移動の問題もある。今回予選リーグ最終戦と決勝トーナメントは10月4、5日と2日連続で行われた。このこと自体が問題ではあるが、それ以上に一部のチームは次の開催地への移動を強いられ、コンディションに大きな問題を残した。特に藤枝でゲームを行ったグループDを勝ち上がった清水ユース(東海1位)と国見(九州2位)は、翌日のゲームが埼玉の駒場だったために長距離移動が必要になった。しかもトーナメントの相手はリーグ最終戦を埼玉で戦い、移動の必要のなかった広島ユース(中国1位)と東福岡(九州3位)。ゲームにおけるコンディションの違いは明らかだった。明らかにハンディキャップ・マッチだったのだ。結果、清水ユースも国見もいいところなく敗れ去った。

 先に書いたグループリーグ最終戦の同時刻&他会場開催のことと合わせて考えれば、「グループリーグ戦とトーナメント戦の間に最低でも48時間の休養を入れた上で、決勝トーナメントの開催地を中間点にするなどの工夫が必要なはず」だと、大会の視察に行われた多くのJリーグ関係者も声を揃えた。選手に最高のパフォーマンスを期待するなら、それなりの舞台を準備してやるのは大人の義務であり仕事である。来年度はこうした問題が絶対に解消していなくてはならない。


■メディアの取り上げ方にも問題 真の意味での環境作りを


 そして加えてもうひとつ大きな問題があったと筆者は思っている。メディアの無知が目に余ったからだ。大会に対する報道自体の少なさはもちろん、関心は極端に低い。いくら「18歳以下の真の日本一を決める大会」と川淵キャプテンが高らかに宣言しようとも、メディアの関心は高校選手権に遠く及ばず、「そんな大会やっているの」と口にする記者までいた。一方的に協会に組織改革や、代表強化を迫るメディアだが、自らの意識改革を怠っている状況はどう考えてもおかしい。「私はユースには興味がない」と平気で口にした女性キャスターもいる。こんな連中が日本のサッカーメディアの中心にいるのか……。何もこれは筆者がユース年代の取材を日常的に行っているからだけではない。日本にとって一番いい育成の形を探っていくことが、今後の日本サッカーの発展につながることは間違いないからだ。そこを無視することが問題だといっているのだ。その意味でメディア自身の反省が必要だ。

 問題点の記述ばかりになってしまったが、もちろんそれ以上に大会の変化を評価する声がある。静岡学園の井田監督は「本大会をリーグ戦に変えることで、従来のトーナメントにない戦いがある。(リーグ戦初戦で対戦した)G大阪ユースは、内容で向こうが押していながら結果的にうちが勝った。今までのトーナメントだったらそれでG大阪ユースは終わりだったけど、まだゲームもある。同じことはウチにも言えるし、真剣勝負の場が増えたことが素晴らしい」と語っている。加えて当然ここまで勝ち上がるためには「今以上に使える選手の数が必要になる」(市立船橋・石渡監督)だけに、指導者の育成の手腕が問われることにもなる。指導者にも厳しい時代が来たことになる。その意味でもプリンスリーグの立ち上げと、全日本ユースの改革は新しい時代の到来を告げるものになった。今後は高校選手権とJユースカップの開催時期を調整し、真の意味でユース年代の一番権威のある大会であることを示す環境作りが必要になってくるだろう。

<後編に続く>
高円宮杯第14回全日本ユース選手権
【グループC順位表】
順位 チーム 勝点
2 静岡学園 4 3 1 1 1 3 4 -1
3 ガンバ大阪 3 3 1 0 2 3 4 -1
1 市立船橋 9 3 3 0 0 6 1 5
4 鹿児島城西 1 3 0 1 2 1 4 -3

【グループC】
09/27 静岡学園 2−1 ガンバ大阪
09/27 市立船橋 2−0 鹿児島城西
09/28 静岡学園 0−2 市立船橋
09/28 ガンバ大阪 1−0 鹿児島城西
10/04 静岡学園 1−1 鹿児島城西
10/04 ガンバ大阪 1−2 市立船橋


sportsnavi 吉村憲文

全日本ユース 改革大会を終えて(後編)

日本サッカー協会の川淵会長と握手する準優勝した静岡学園高の松下主将=埼玉スタジアム【共同】 

■とてつもないインパクトを残した広島ユース


 大会の総括に随分文字数を費やしてしまったが、ここからは大会で見えた各チーム、各選手のパフォーマンスについて書こう。そこでまず最初に広島ユースについて触れたい。

 準決勝で静岡学園に敗れ、タイトルにこそ手は届かなかったが、その力はまさに『サプライズ!』であり、とてつもないインパクトをもたらしたチームだった。U−18日本代表の左SB高柳、J1、J2を通じて最年少出場記録を塗り替えたMF高萩(U−18日本代表)を中心に、非常に高い技術と豊かな発想、そして組織力を兼ね備えていた。3トップをベースに予選リーグでは帝京に6−0、東福岡に5−0と圧勝、完全にメンバーをサブに落とした星稜戦も3−1と完勝だった。そしてハイライトは準々決勝の国見戦。スコアこそ1−0ではあるが、内容では8対2の割合で国見を圧倒した。DFの背後を狙うロングボールと、強じんなフィジカルを前面に押し出し、トーナメントの戦いを熟知している国見に、まったく何もさせない完ぺきな戦いぶりは驚きであった。確かに国見のコンディションに問題はあったと思われるが、それよりも何よりも広島ユースの強さを感じずにはいられなかった。

 ただ、その広島ユースも国見戦から1週おいた準決勝では静岡学園の軍門に下った。サッカーの質の点では両者は非常によく似ていたが、高体連の勝負強さに屈したといってもいい。またゲーム直前の1週間が広島ユースの選手全員が通う高校の中間テストだったことも、ゲームにはマイナスに働いた。「高柳が足をつるところは見たことがなかった。他にも3人くらい足を伸ばしている選手がいて、(戦術的に)交代するにも、もしダメな選手が出たときに、交代できなくなる。延長のことを考えると動くに動けなかった」と森山監督は振り返った。コンディションが勝負の分かれ目になった今大会だが、広島ユースも力を持ちながら、最後にコンディションに泣いた1チームだった。

「勝って、(高体連中心の)日本の育成年代を変えたかった。それも負けてしまっては負け犬の遠吠えになってしまいますけど」と森山監督は語ったが、「(準決勝に)G大阪ユースとか勝ち上がってきていればよかった。正直(クラブの代表として)勝ちを意識しました」と少なからずプレッシャーもあったようだ。日に日に高まる評価、逆にそのことで普段のサッカーができなかったのかもしれない。優勝に値する力が十分にあっただけに残念だった。



■高校選手権でも期待が集まる市立船橋と静岡学園


 さて優勝した市立船橋だが、非常にバランスが取れていた。布監督が昨年度の高校選手権を最後に退任、部長だった石渡監督を迎えた1年だったが、ベースとなる市立船橋らしさは完全に受け継がれていた。関東のプリンスリーグでMVPを獲得したリンクマン根本、DFには増嶋、FWカレンと3ラインに核となる選手がいた。さらにツートップの一角に起用された190センチのタワー、榎本が大会中に急激な成長を遂げるというプラスアルファもあった。榎本はこれまで公式戦起用されたことは一度もなかっただけに、市立船橋というチームの選手層の厚さ、そしてチーム全体の底上げを感じるばかりだ。チームが2週間の大会期間中にも一回り成長していった感じだ。

 準優勝の静岡学園はG大阪ユースと争ったグループリーグ2位の座をギリギリで獲得。決勝トーナメントに進んだ。細かくパスをつなぐ静岡学園のサッカーが健在な上に、小林と松下というU−18日本代表に名を連ねるふたりのDFの存在を生かすサッカーを見せてくれた。グループリーグで市立船橋と対戦したときには、4−3−3で挑み、前線の選手が前掛かりになり、やや中盤のスペースが空いたところを市立船橋に狙われ、アーリークロスをフリーの状態で前線に入れられてしまった。結果、0−2の完敗を喫することになったが、大会期間中に3−5−2に修正。松下を左WBに入れ、右WB中村とバランスをとらせながら、攻守にキレのあるプレーを披露したのは見事だった。技術面と戦術面がバランスを保っていたし、準優勝はフロックではない。高校選手権でも市立船橋と並ぶ優勝候補の一角だろう。

 さて、そのほかのチームだが、準決勝で市立船橋に敗れた東福岡は、現在持っている力を存分に発揮してのベスト4だった。「(予選リーグで)サンフレッチェに0−5で負けて、全国にはこんなに力があるチームがあることを知って、それを自分たちの経験にできた」と森重監督は話したが、広島ユースに敗れた後、それをバネに帝京に4−0、清水ユースに3−1と素晴らしいサッカーで勝ち上がってきた。4−5−1のシステムに加え、市立船橋戦では3−6−1を使うなど、バリエーションも増えた。勝つことでチームが成長することを証明した典型的な例だ。例年に比べ3年生にタレントは少ないが、2年生のDF近藤、ゲームには出場していないが1年生のGK下野は既にプロもマークする選手である。「できれば決勝で広島とあたり、2週間の間に0−5の力の差がどれだけ縮まったかを試したかった」と森重監督は話したが、この2週間で間違いなくチームは大きく成長できたはずだ。

 次に国見。国見はこの大会でも国見らしいサッカーではあった。が、準々決勝で広島ユースの前にいいところなく敗れ去った。賛否両論ある国見のロングボールサッカーだが、広島ユースにはまったく通用しなかった。これには先にも書いたがコンディションの問題もあったかもしれないが、サッカーとしての精度に差が大きく存在した。今回の敗戦だけを取って、国見のサッカーの限界をうんぬんするつもりはない。「信念を持ってやっている」という小嶺総監督のサッカーだけにスタイルの転換はないだろう。ただ、この国見のサッカーを、技術と組織力で凌駕(りょうが)する広島ユースのようなチームがもっと出てくれば、ユース年代のサッカーがもっと大きく変化していくのではないだろうか。その意味で国見の敗退は何かしらの予感めいたものがある。



■来年以降、さらに魅力的な大会へ変ぼうを


 さて、最後にもうひとチーム。G大阪ユースであるが、正直予選リーグで姿を消したのは残念だった。タレントではDF丹羽、MF寺田、家長、FW三木といったU−18代表(候補含む)を擁し、丹羽を除く3人は既にトップチームに完全合流している。それ以外のポジションにもタレントがそろっており、優勝を狙うに十分な布陣だった。実際、予選リーグでは静岡学園を圧倒しまくり、市立船橋とも五分以上の戦いを見せた。「(市立船橋とのゲームの)前半の戦いならどこにも負けないだけのプレーができていた」とG大阪の上野山育成普及部長は話したが、それは事実であると同時に勝負弱さが目に付いた。静岡学園戦でもつまらないGKのミスが決勝点につながり、市立船橋戦でも引き分けでもリーグ突破の場面でゲーム終盤に決勝点を奪われている。技術力や組織力だけでなく、勝負の流れを読む力もサッカーの一部であることを意識してほしい。広島ユースと並び、全国でも最高レベルのタレントがひしめき、稲本や宮本といったフル代表を生み出す土壌はあるだけに、ゲーム運びに磨きをかけてほしい。冬にかけて行われるJユースカップではそのあたりに注目したい。

 それ以外にも清水ユースや、鹿児島城西など好チームが存在した。MF枝村、FW阿部(ともに清水ユース)、MF中山(鹿児島城西)、MF増田(鵬翔)などの好素材も各チームに見られ、かつてのように一部のチームだけにタレントが集まることもなくなった。その意味でユース年代の底上げを感じることもできる大会だったといえる。ただ現状ではFWにタレントを欠くことも否めない事実ではあったが……。

 来年以降はさらに全日本ユースに参加できるチーム数を現行の16から24に増やすことも検討されている。そうなればプリンスリーグで涙をのんだ幾つかのチームにもチャンスが広がることになる。同時に多くのチームがここで経験したことを全国に持ち帰ることもできるはずだ。優勝チームと準優勝チームの海外派遣も実施される。さらに魅力ある大会へとプリンスリーグと全日本ユースは変ぼうを遂げ、魅力的なタレントが輩出されることが期待される。

<了>



高円宮杯で清水、静学は「死の組」に

目標は優勝と静かに闘志を燃やす静岡学園・井田監督(写真右)。着実に上を目指すと話す清水・築舘監督(右)。左は抽選役の元日本代表FW福田氏

 高円宮杯第14回全日本ユース(U−18)選手権組み合わせ抽選会が2日、東京都内で行われた。プリンスリーグU−18東海優勝の清水ユースはグループDに入り、昨年優勝の国見(長崎)札幌U−18(北海道)滝川二(兵庫)を藤枝市総合運動公園サッカー場で迎え撃つ。また2位の静岡学園はグループCで、選手権優勝の市船橋(千葉)G大阪(大阪)鹿児島城西(鹿児島)と対戦する。清水ユースの27日に藤枝市総合運動公園サッカー場で札幌と、静岡学園も同日、千葉・柏の葉公園総合競技場でG大阪とそれぞれ初戦を行う。

 全国9地域、16チームが4つのグループに分かれた中、県勢2チームが入ったグループC、Dは、屈指の強豪がそろう「死のグループ」となった。清水ユースが入ったグループDは、大会2連覇中の国見を筆頭に、総体16強の滝川二、昨年の高円宮杯(U−15)で準優勝し、北海道で圧倒的な強さを誇る札幌U−18が集まった。また静岡学園が戦うグループCにも、市船橋をはじめ、U−18日本代表候補3人を擁するG大阪、初出場ながら九州地区決勝で国見を1−0と破った、鹿児島城西が顔を並べた。

 各グループ上位2チームが進出する決勝トーナメントへの道のりは、文字通りいばらの道。それでも両指揮官は、むしろこの状況を心待ちにしていたかのように納得の表情を浮かべた。

 清水ユース・築舘範男監督(43)「勝ち進まなきゃ当たれない国見と、一発目でやれて良かった。静岡の田舎の子たちが、できるだけ遠い所で戦いたいと言ったので、藤枝の予選を勝ち上がり関東に行きたい」。

 静岡学園・井田勝通監督(61)「4年前は草薙で市船橋に6点取られ(1−6)、2年前も京都ユースに0−1で過去2回とも初戦負け。でも夏に強化し、一皮むけた。強い相手の方が、うちはやりやすいよ」。

 両チームとも国体県選抜に複数選手を出し、ベストメンバーがそろう機会は少ない。また静岡学園は、全国選手権出場時に直前調整を行う「準ホーム」柏で戦える一方、FW横山拓也(3年)が右足甲外側の骨にひびが入り、ギプスをつける状態と不安もある。それでも両監督は「まず足元を見て日々の練習から始めたい」(築舘監督)「優勝チームは欧州遠征もできる。30年やってきたことがどれだけ通じるか試したい」(井田監督)と初制覇へ闘志を燃やした。【村上幸将】

 ◆静学主将の松下「優勝が目標」 U−18日本代表候補はこの日、2部練習を行った。午前は1対1、2対2など攻守に局面を意識した練習を行い、午後はゲーム形式の練習で今日3日の柏戦に備えた。静岡学園主将のDF松下幸平(3年)は、練習後「柏戦も楽しみですけど、高円宮杯も楽しみですね」と笑みを浮かべた。プリンスリーグ2位通過で、1次リーグがアウエー戦となったことについては「ぼくらの力を出せれば関係ありません」と意に介さなかった。国体合宿等でチームを離れることが多かったが「国体合宿後も、休まずにチームの練習に参加しました。つらいけれどチームが大事。目標は優勝ですから」と、強い意欲を見せ練習場を後にした。

[2003/9/3/10:35 紙面から]

写真=目標は優勝と静かに闘志を燃やす静岡学園・井田監督(写真右)。着実に上を目指すと話す清水・築舘監督(右)。左は抽選役の元日本代表FW福田氏


変わりゆくユース年代 

変わりゆくユース年代
2003年プリンスリーグの幕開け

■公式戦の重みによる選手・指導者のモチベーションの変化
「ユース年代に育成を目的にした新しい大会を」との発想から、今年度新たに創設されたU−18プリンスリーグ。これまで高体連とクラブユースの垣根を越えて行われる公式戦はトーナメント方式の全日本ユースのみだったが(※例外的にU−18関西リーグが関西サッカー協会公認の下に、2年前から行われていた)、プリンスリーグは読んで字のごとく、北海道から九州までの9地域ごとにリーグ戦形式で優劣を争う大会となった。リーグ設立についての詳細はこちらを参照してもらいたい。
 さてこのプリンスリーグ、8月中にすべての日程を終えることになっているのだが、既にすべての日程を終えた九州、中国など、それぞれの地域で大まかな勢力地図は見えてきた。同時に選手、指導者にとっては大会の意味が輪郭としてハッキリとしてきたようだ。
「選手のモチベーションの点でも『公式戦』であることは全然違いました」と話すのは市立船橋の石渡監督。昨年度まではU−18関東リーグとして行われていた大会(非公式)があったが、そこにタイトルの重みは希薄だった。
「インターハイや高校サッカー選手権に比べ、全日本ユースは行けたら、行ければ、のようなところがありました。関東大会に勝って、勢いでみたいなところがありましたね(注:昨年度までは高体連は各地域大会優勝チームが全日本ユースに出場)。ところが、4カ月ずっと戦って、力のあるチームが出るというふうに意味合いが変わってきました」
 7月23日、関東リーグの最終節で市立船橋と前橋育英が激突。Jリーグのスカウトも数多く足を運んだ高校サッカー界の強豪同士の激突は、前半立ち上がり50秒に前橋育英が市立船橋のすきを突いて先制。しかしその後、市立船橋が流れを取り戻し後半3分に同点に追いつく。結局両者一歩も譲らず1−1のドローに終わった。ゲームは両者のクオリティーの高さを随所に示すものだった。このレベルの戦いばかりではないことも現実だが、こうしたカードが公式戦で行われることは意味深い。前橋育英などは既に全日本ユース出場決定トーナメントへの進出(関東A、Bグループのそれぞれ上位3位まで)を決めていただけに戦い方が難しかったが、
「絶対に勝ちに行く。モチベーションをしっかり高めて戦うことを徹底した」(前橋育英スタッフ) というように、トーナメントとは違った意味でのモチベーションのあり方も、リーグ戦になったことで生まれた。結果前橋育英は後半に入って退場者を出したことでゲームプランは崩れたが、長いリーグ戦を戦い抜いてきたことでタフな戦いができるようなったようだ。

■高校勢が占めた関東 予想通りの関西
 さて関東の結果だが
【グループA リーグ戦結果】 1位:桐光学園 2位:帝京 3位:鹿島
【グループB リーグ戦結果】 1位:前橋育英 2位:市立船橋 3位:浦和東
 見ての通りJユースが1チームも入っていない。ユース年代は3年でチームがひとサイクルすることから、この結果だけを受けて「関東は高体連がJユースを実力的に上回っている」とは言い難い。ただJユースは質の高い練習と言われがちだが、運動量などフィットネスの部分で、「選手を追い込んでいない」とあるJリーグチームのスタッフが話す通り、ややもの足りないものがあった。「質より量と言われるが、この年代は絶対量が必要な時期で、やったらやっただけ身になる」という他のJリーグ関係者の声もある。

一方、関西ではある程度予想通りの結果になった。
【Aブロック リーグ戦結果】 1位:セレッソ大阪U−18 2位:京都パープルサンガユース 3位:金光大阪
【Bブロック リーグ戦結果】 1位:ガンバ大阪ユース 2位:滝川第二 3位:大阪朝鮮
 関東と同じく、8月下旬に2つある出場枠をトーナメントで争うことになるが、関西のJユースの4チームのうち3チームが残っている。中でもガンバ大阪ユースに関してはU−18日本代表4人を擁し人材の点では日本のユース年代でも最高レベルだろう。ゆえに
「引いて守ってくる相手にいかに点を取るか、戦い方をいろいろと学べる部分がある」(ガンバ大阪ユース島田監督)
 と高体連との戦いの中で得るものは多かったようだ。
 ただ、そのガンバ大阪ユースも幾つかの穴はあり、特にDF陣には不安が隠せない。滝川二戦では明らかに守勢に回る時間帯もあった。また既にトップ昇格しているMF寺田、家長、FW三木もゲーム前の数日だけユースでチーム練習に参加し(彼ら3人は現在もユース登録)、ゲームに挑んでいる。微妙なコンビネーションなどに課題を残したのも事実だ。この点で常にほぼ同一メンバーで練習、ゲームを行う高体連に比べJユースは劣ることになる。高体連とクラブの目的の違いがそのままゲーム内容に出たゲームもあった。過去の例で見るとガンバユースの育成方針はハッキリしており、夏までは徹底して個人の能力を伸ばす方針で、秋を過ぎてチームとして形を作る。その証拠に夏のクラブユース選手権では優勝経験はないが、冬のJユースカップでは史上最高3回の優勝を果たしている。それに今年は全日本ユースが通年大会として加わったことでどのような結果が出るかが楽しみだ。
 さてその他の地域では東海が出場枠2に清水エスパルスユースと静岡学園、中国(出場枠1)はサンフレッチェ広島ユースとなっている。いずれのチームも非常にポテンシャルが高い。特に東海2位の静岡学園はインターハイ出場権を藤枝東に奪われたものの、リベンジを果たした。トーナメントとは違う結果が出るところがリーグ戦のリーグ戦たるところといえるだろう。本大会でも優勝候補の一角に名を連ねると見られる。

■明らかに問題のあった九州の順位決定戦

 これまでプリンスリーグの全国の動向を見てきた。そこで最後に残った九州について。

 各県に名門と呼ばれる高校が存在し、圧倒的に高体連の実力がクラブユースを上回っていることは過去の歴史でも明らかだが、今季もその構図は崩れなかった。プリンスリーグへ出場できたクラブユースはアビスパ福岡U−18の1チームのみ。そして全日程を終えて全日本ユースへの切符をつかんだのは鹿児島城西、国見、東福岡の3チームとなった。特に鹿児島城西はJリーグも注目するU−18日本代表のMF中山を中心に、パスサッカーで国見を破り九州を制した。インターハイは鹿児島実の後塵を拝したが、やはりリーグ戦では結果が大きく変わってくることが東海に続いて証明された。

 ただ、九州の代表決定の過程で大きな問題も存在した。リーグ戦を終え、順位決定戦でのことだ。九州地域には全日本ユース出場権は3枠が割り当てられているのだが、その3チームの決め方はA、B組に分かれてリーグ戦を行った結果、各組の上位2チームを選出。その2チームがたすき掛け方式で順位決定戦を行う。まず準決勝を行い、勝った2チームはその時点で出場決定、さらに3位決定戦と決勝を行うことになっていた。

 ところがこの順位決定戦が大問題で、準決勝を午前中に行い、3位決定戦を同日の午後に行うことになっていた。この日程には当初から非難ごうごうだったが、結局強行された。準決勝の組み合わせは国見対東福岡、鹿児島城西対鵬翔。ここで東福岡は国見戦に主力を温存、結果0−9で敗れたものの、3位決定戦で鵬翔を2−1と下し3位で全日本ユース出場権を獲得した。

 東福岡が主力を温存したことには批判もあったが、本来批判されるべきは九州サッカー協会である。ゲームが1日に2ゲーム行われることで、どのゲームに力を注ぐべきかを冷静に考えれば、結果的にそうならざるを得なかったというべきだろう。枠は3つあるのだから、戦略的にどこに力を注ぐべきかを考えるのは当然のことだ。むしろ、なぜ協会が一日2試合にこだわったのか――。しかも1日2試合の体力面を考慮し、ゲームは35分ハーフで行われた。プリンスリーグ、全日本ユースのゲームは45分ハーフで行うという趣旨はいったどこに消えてしまったのだろうか。準決勝と3位決定戦、決勝を1週ずらすだけで問題はなかったはずだ。そうすればどのチームもフルメンバーで戦うことはできたし、45分ハーフでゲームも行えたはずだ。

当初からプリンスリーグは8月31日までに終了すればいいと規定されている。現実、関西も関東も7月末でリーグ戦が終了、8月末に順位決定戦が行われる。九州も時間には余裕があるはずだ。他地域の指導者にこのことについて聞いたところ、「明らかに日程が問題。もしウチが東福岡の立場なら、ウチでもそうする可能性はある」との声が返ってきた。来年度以降の課題として、各地域協会は綿密に日程を検討してほしい。

 ほかにも問題はある。言葉は悪いがアシスタントレフェリーが使い回されるケースもある。大体リーグ戦は日程の都合上同一会場で2試合が行われることが多い。先日、市立船橋と前橋育英のゲームの前には、流通経済大柏と前橋商とのゲームが行われた。この2試合ともアシスタントレフェリーは同じだった。アスリートと同様の体力が要求される審判団に2試合をジャッジさせることはどう考えても無理だろう。体力が落ちれば、ジャッジにもミスは出てくる。ただ、残念なことにこうしたことはインターハイや高校選手権の予選でも行われている(ひどい場合は各クラブの部員がジャッジするケースすらある)。選手やスタッフは真剣に勝負に挑んでいる、それをひとつのミスジャッジが無にしてしまいかねない。昨年度の高校サッカー選手権予選決勝でミスジャッジに泣いたチームがあったことを忘れてはほしくない。

■プリンスリーグは発展途上 いつの日か最大のタイトルが全日本ユースに

 上記の問題は改善しようとすればすぐにでも取り掛かることはできる。ただ大きな問題として、9地域に分けて大会を行うことで、九州、関西、東海、関東などのレベルの高い地域と、そうでない地域との格差がより大きくなることが懸念される。私見としては全国をもう少し大まかに分けて、九州と中国をひとつのグループに、同様に関西と四国を、北信越を東海または関東、東北と北海道といったくらいの大胆なグループ分けをしないと、発展途上の地域はどんどん取り残されていくことになってしまいはしないか。

 かつて国見の小嶺監督(現総監督)が強豪との対戦を求めて自らバスを運転して関西や、関東に遠征に出掛け、今の国見を作り上げたように、格上のチームとの対戦でしか見えてこない部分は多いはずだ。もちろん、このあと全日本ユースでは参加16チームをグループ分けして、リーグ戦形式の対戦が用意されている。ただ、そこに出場できるチームは数少ない(注:北海道=1 東北=1 関東=2 北信越=1 東海=2 関西=2 中国=1 四国=1 九州=3 さらに2003年度のインターハイ、クラブユース選手権各優勝チームを加えた16チームが参加)。しかも北信越のプリンスリーグはわずか5節で終了してしまう。東北のように参加8チームで2サイクル、都合14節というように、工夫を凝らすこともできるが、やはり他地域との対戦を増やすことが全体のレベルアップにつながることになるだろう。

 またプリンスリーグが通年大会となったことで、今後はどのチームも選手層に厚みを増していかなければ大会を勝ち上がることはできない。特に九州などは3月に大会が始まる。これまでなら高体連のチームはインターハイをひとつの区切りに、チーム力の整備を考えればよかった。しかしプリンスリーグができたことで、3年生が引退した直後の新チームで公式戦を戦うことは、チームの潜在能力が試されることになる。指導者にとっては大変な時代になったともいえる。

 ここまでプリンスリーグの全国の動向をざっと見てきた。同時にそこで見えてきたこれらの課題は、新しい試みの発展途上の問題として存在するわけで、年々改善がなされていくことになるはずだ(と思いたい)。今年より来年、来年より再来年と、改善を加えることで選手育成にプラスになる大会へとよりグレードアップして欲しい。ユース年代にとって最大のタイトルが全日本ユースといわれる時代が近い将来やってくることを願いたい。

<了>